エンドロールには早すぎる

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『ファイナル・テーブル』Netflixがまた豪華な料理番組を配信

Netflixってこの手の番組多くないですか?
道具と食材を用意して、タレントを揃えて、何か課題を与えて自由にやらせてみるみたいな料理番組です。
スイーツを作るほのぼのとした番組もあれば、"大麻料理"を創作するという怪しげな番組も配信されてますよね。
やっぱり料理って普遍的な人気テーマですから、ウケもいいんでしょうね。
俺は料理の出来を競い合う系の番組があまり好きじゃありません。何故か? 俺の料理に対する見識が浅いから。しかも画面の向こうの料理なんて喰えねえし、高級料理なんか作れねえし、みたいな。でもこの番組は観ました。タレントが豊富だから。
審査員にグラント・アケッツやエンリケ・オルベラなど俺の好きな『シェフのテーブル』という番組でも取り上げられてた名前があったので、彼らが出演すると言うことは、彼らと肩を並べる才覚者たちも出演するだろうと期待してのことです。(俺は料理番組で料理そのものより料理人に注目してる浅ましい人間です)
期待は裏切られませんでした。審査員には成澤由浩シェフの姿もありました。世界のベストレストランなどで検索すると日本のお店では彼のレストランの名前がよく目につくので、気になってた人物でした。少しだけでしたが観れてよかった。
日本人シェフとしては、挑戦者として石川県で料亭を営む高木慎一朗氏が出演していました。彼を検索すると、日経の記事で取り上げられているのがすぐにわかりますが、日本食ブランディングに対してとても意識の高い人です。実際、農林水産省から「日本食普及の親善大使」に任命されているそうです。この番組への出演は、その取り組みの一環なのかもしれません。全然知らない人でしたが、彼を応援するのは自然なことでした。

『ファイナル・テーブル』の内容。
世界中の名店から腕利きのシェフたちが集められて、みな等しく挑戦者となり、世界のどこか特定の国の伝統料理を創作しろと言われ、その出来を競い合わされる番組です。他より出来の劣るものを作ってしまった1チームは敗退します。もちろん次の収録にはおらず、課題には挑めません。
審査員には各国を代表する、"料理で世界を変えてきた"とも言われる超一流のシェフが並びます。挑戦者は彼らの容赦のないレビューに晒され、勝ち抜いた最後の一人だけが彼らと同じ席(ファイナル・テーブル)につけます。
お門違いのジャンルの料理を、制限時間60分以内に仕上げろ、ということなので、修羅場を乗り越え栄光を手にしてきたひとかどのシェフと言えど、厳しい戦いを強いられます。競う相手も一流ばかりなので尚の事です。
メキシコ、スペイン、イギリス、ブラジル、インド、アメリカ、イタリア、日本、フランスの伝統料理の一風変わったメニューが見られます。最終回は個人戦で、自身の代表作を作れと命じられます。

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以下ネタバレあり。

情報の味付け

まず、やっぱり料理人にとって「星」っていうのは特別な価値を持つことなんだなぁと強く思いました。
番組内では「こうこうこういう努力を続けた。そして私のレストランは星を貰った」「彼らのレストランは星を持っている。競い合えて夢のようだ」など、事あるごとに「星」という単語がでてきます。
集客とか格とか誇りとか、そういう何かしらが星のある・ないでは全然違うと、料理人自身が一番思っているのかもしれません。
どこどこ推薦、なになに賞受賞、これこれ評価9.0以上みたいな、「格付け」的なあれが世に溢れすぎているため、俺は麻痺していて、大切なことを忘れていたようです。
客目線では明らかに需要があります。みんな料理に対しては、評論家ぶりたいものです。しかし、自分の舌に自信のある人がどれほどいるでしょうか? 俺はウイスキー好きを自称していますが、実のところ、マッカランの18年を頂いても、バランタインファイネストを飲む程度のありがたみしか感じない可能性は、十分あります。何故か? 何が本当に良いものかを定義する自分の感性に、自信が持てないからです。確かに違う味わいだが、大金を払うほどの価値があっただろうか? ウイスキーが好きというのは毎晩アルコールを摂取するために自分に言い聞かせてるだけなのではないか? そうだとしたらバラファイで必要十分なのではないか? という具合です。そして俺はネットで検索し、マッカランは極上でプレミアムで他の安物にはない至福の時間を提供してくれるものだとする評判を見つけ、ようやく安堵の溜め息をもらすわけです。料理についても似たようなことが言えます。寿司を食べたい気分でも、一皿百円の回転寿司では済ませたくない、と俺が考えていたら、一体どの店を選べばいいのでしょうか? 上質の食材を使い、経験のある料理人が調理し、雰囲気のある空間で食事をするのなら、その価値を分けるのは何なのか? 自分の感性を信じる根拠はどこにあるというのでしょう? 誰だって、本当に良い店で食べたいが、毎日のように違う店を渡り歩いて比較して感性を磨き本当に良い店を見つけていく……といった余裕のあるプロセスを踏むのは難しい。年に一度の特別な日にしか訪れないような高級店なら尚の事。そういう時、「星」は役立ちます。情報を食っていると言われようが、評論家がこの店には素晴らしい価値があるというのなら、みんな信じます。現にそう評価されていたら、それが現実なのです。これに懐疑的な意見を持った時は、自分の感性を試し、成熟させていくチャンスだと言えます。情報の味付けなしにお店の料理を食べる。正直羨ましいですよ。
そもそもこの番組の趣旨自体が格付けですしね。最初のメキシコ戦で敗れた人たち可哀想…(TT)

一つだけ気になったのが。
終戦以外はシェフが二人一組で料理するわけですが、彼らは口々に「相方と組めてよかった」「相方とのきずなが深まったのが一番の収穫」「相方との料理体験はスペシャルなものだった」などと評します。まあ、それはいいんですが、もうちょっとそれがよくわかるようなストーリーを立てたほうがより説得力が出たのでは? と思います。いや、疑ってはいません。そりゃ、そんなことは頭で考えればわかってる。常識的に考えればね。そりゃ当然、こんな舞台でこんな作業をしてれば絆は深まりますわ。でも何かちょっと薄っぺらかったんだよね。本音とは思うけど、やっぱ人数多いし一人一人のシェフがカメラに映る時間もそんなになかったしさ。もっとキズナを押し付けるような演出があったほうがわかりやすくグッときた可能性はある。優秀な構成のいる番組では、恐らくもっと視聴者を出演者に感情移入させるストーリーを仕掛けてきてたと思う。まぁ、そこが主題でなかったかもしれないし、リアルなシェフたちなので過剰な演出なんてキモイだけ、ってことかもしれませんが。もしくは単にまとめる時間がなかっただけかも。つってもそこにあるのだけが現実ですから、しょうもない難癖はここまでにしておきましょう。こういうの改めて二回目見ると印象全然変わったりするし。
それにあのオーストラリアのベテラン二人組は凄く説得力を感じました。あいつらは良かった。ラファ&エスドラスも好きだった。てか好きな出演者なんだかんだ多いな。チャールズ&ロドリゴとか絵になりますよね。料理に”哲学”を凄く感じて、いい。

ファイナル・テーブル

優勝者はティモシー!
正直地味だと思ってました。でも最後の最後でかっさらっていきました。
終戦の課題は「代表作」を作るコト。審査員席にずらりと並んだ創作料理の一流シェフたちは、リスクのあるものが好物です。他の挑戦者は、今まで試さなかったものや番組に出演したことによって学んだことを頭に入れて、店では出していない料理を新しく考えていました。しかしティモシーは自分の店で出している、自分にとって思い入れのある料理を出しました。批評タイムでは、リスクをとらなかったティモシーの料理は最初、劣勢に見えました。他のみんなはリスクをとっているのに安全策はフェアではないのでは、という耳の痛い意見もありました。そんな中グラント・アケッツは言いました。「自信のあるものを提供するのは悪いことではない。リスク回避というのなら、他のプレートにも多かれ少なかれそれは表れている。鳩なんて美味いに決まってる。一番大事なのは、味だ」
というわけで、一番「ウマい」料理を出したティモシーが勝利して、ファイナル・テーブルの座につきました。もちろん味だけではなくすべてがパーフェクトだから、ということらしいです。
18歳で皿洗いの職に就いたティモシーの選択は、間違いじゃありませんでした。This is Dream. ストーリーのある終わり方でした。

てか、どうでもいいですがグラント・アケッツの喋り方が好きです。
な~んか特徴的で面白いですよね。
この方は料理人なのに味覚を失う病気にかかったりしてる苦労人です。(ってか、シェフに苦労人じゃない人なんてそうはいないか……激務だしね……休みも全然とれないらしいじゃん? 優勝者のティモシーはそれに疑問を感じて三ツ星の料理店を辞めたらしいからね。自分の店を持ってる今は本当に家族と過ごしたり何も考えず休んだりしてる時間をとれているのだろうか? 気になる)

総評。
確かに面白かった!
創作料理の数々は見てるだけで感動するし調理のテクニックも凄いし出演者のキャラクターも濃くて面白かった。
けどやっぱり俺は、なんか好きになれねえな、と思ったのは、一流のシェフの作る料理がたった数人のレビュアーの好みで比べられ批判され敗退までしてしまうっていうのが、なんか感情移入しちゃって、挑戦者可哀想だなぁって、勝手に思ってるからです。とはいえこの番組は凄く面白かったです。仮に続編が見られるなら、フレンチとかもいいけど、もっと発音もできないような他の国のよくわかんない伝統料理とかでバトってみたら面白いんじゃね? とは思いました。
Netflixは料理系の番組多いからもっと見てみようかなぁ~。

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