エンドロールには早すぎる

ドラマや映画やゲーム。どうしてそれが面白いのかを考察します。

『アサシンクリード オリジンズ』で俺はエジプトの守護者になる

アサシンクリード・シリーズは毎年のようにリリースされるUBIの歴史・アクション・ゲームだ。
俺はこのシリーズを興味があるもののやったことがなかった。正直手に取り辛かった。たくさんあるし、何からやればいいの、みたいな。だがオリジンズはシリーズ未プレイでも良さそうな空気だったので買った。というか、古代エジプト世界が舞台になっているということに最も惹かれた。この業界は中世ヨーロッパ風ファンタジーや戦国や現代を舞台にしたゲームには事欠かないものの、エジプトとなるとめっきり減る。しかも大作とあっては尚の事、希少価値が高い。
ちなみに2018年10月現在、既にオリジンズの次のタイトル『オデッセイ』が発売されているが未プレイだ。なので「今さらオリジンズの感想かよ」ということになる。

正直、トロコンすると思っていなかった…

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何せ、序盤の方で俺は脱落しそうだったから。
ハッキリ言って「ちょっとつまんねぇな」と思っていた。
もちろんプレイを終えた今となっては「面白かったぁ~」って感じだが、序盤は、苦しかった。まずそれが何故かを考察する。


世界観に没頭できる作りになっていない
もしくは、時間がかかる、と言うべきか。
これはこのゲームが単なる「プトレマイオス朝エジプトの一人の守護者の話」ではなく、「アサシンクリードという大きなうねりの中の一局面の話」というスタンスをとっているからかもしれない。
俺はびっくりしてしまったのだが、このゲームにはなんと「現代篇」なるものが存在しており、現代の学者が墓を荒らして主人公のミイラの記憶を辿るというスタンスをとっているのだ。(現代篇ははっきり言って苦痛だった。シリーズファンは好きかもしれない。だが俺の感想はこれだけだ。要らん!)
まあそういうスタンスなので、およそプトレマイオス朝エジプトという世界観の妨げになる、ふさわしくないいくつかのポイントについては、そういうものだから受け入れてねというわけかもしれない。
とはいえ、ここに限っては俺は妥協できない。
まず、メニュー画面など。この辺りは、ベセスダの「フォールアウト」シリーズを見習っていただきたい。本作のメニュー画面は、残念ながら、作りがダサい。古代っぽくない。フォントとか、クエストを表示するフレームとかに、気が配られていない。画面のデザインはとても大事だ。たしかにこのゲームはフィールドは素晴らしい! だがそのぶん、ギャップのある違和感たっぷりなメニュー画面にがっかりさせられた。何故フィールドを狂気レベルにこだわっておきながら、メニュー画面をああいうふうにするのを許してしまったのか?(ストアの表示とか、ハッキリ言って萎えるわけだ)
次にオンライン要素のせいでマップにはどこかの他人の写真が見たくもないのに表示させられ、フィールドにはどこかの他人の死体が転がっている。邪魔だ! エジプトを旅行しているときに現実のことなんて考えたくない!!
こんなふうにエジプト世界への没入を妨げる作りの甘さが至る所に見られ、なんだか、萎える。という感じ。一見、メニュー画面のデザインなんか大したことねえだろ、と思うかもしれない。俺も実際大したことなくね、と思いつつ、掘り下げて自分の心を覗いてみれば、多分こういう細々としたところが甘いせいで萎えてるんだと思う。

シナリオが甘い
メインもサブクエストも両方だ。骨格はじゅうぶん面白いものの、こまごまとしたところが、甘い。キャラクターの表情も、頑張っていることは頑張っているのだが、甘い。せりふも、ところどころいい感じにはなるが、基本的に、なんかなぁ…という具合だ。
要するに、心を震わせるシナリオがまるでないのが問題なんだ。
別に感動の涙を流したり爆笑のツボにはまったりしたいわけではないが、心に響いてくるような何か、”ライターの作家性”というものが、この手のゲームには必要だ。それが足りてなかった。
(後述するが、たぶん半円形人物の魅力が足りてないんだと思う。円形人物のバエクだけが輝く構成になっている)
もちろん丸っきりダメではない。ただ薄味だっただけ。ときおり「おっ」と思わせるシナリオやセリフや演出が現れて、そのおかげで、なんとかやりきれた。


……ということで、序盤は↑のような欠点のせいでくじけそうだった。クリアせずに売ろうかなぁとすら思っていた。俺には合わないゲームだと。
だがどういうわけか、俺は時間を忘れてコントローラーを握り、らくだに乗って砂漠を渡り、ナイル川流域で起こる地元の問題を片付けはじめ、とうとうトロフィーコンプリートまでしてしまった。

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俺は二十一世紀に生きる吐いて捨てるほどのプロレタリアートから、プトレマイオス朝エジプトの守護者・バエクに生まれ変わったのだ!
一体何がそうさせたのか? 次はそれについて考察する。


ドン引きするほどクオリティの高いフィールド
ああ、エジプトよ。砂漠、ピラミッド、ナイル川古代文明……広大なフィールドを歩けば歩くたび、名所に次ぐ名所が現れて俺は圧倒される。冒険心が蘇り、俺はただの旅行者になる。
マジで、マジで、マジでヤベェくらいフィールドがヤベェ。物語の初め、砂漠のど真ん中から始まって、大都会アレクサンドリアに古都メンフィス、競馬場に闘技場、ギザのピラミッドやファイユームのオアシス、小さいながらも作り込まれた集落や荒野に砂漠、湿地帯、畑、神々の遺跡をまわり……へとへとになって終盤、リビアに入って地中海沿岸っぽい緑の畑を走り、キュレネにたどり着いた時……俺は、泣きました。
なんてことだ……
ここまでのフィールドは、流石に想像してなかった。あまりにも、素晴らしい。
細々とした作り込みも流石だ。民衆の暮らしの動きは興味深い。エジプト人は過酷な労働に従事させられ、外国人指導者の下ギリシャの神殿やローマの水道橋を建設している。アレクサンドリアやクロコディロポリスでは裕福な外国人が一等地に暮らし、エジプト人は隅っこの湿気た区画に追いやられている。特産品の描写も面白い。種類はよくわからないが、それぞれの畑の違いとか、そういうのだ。シワの遺物の贋作がユーヘメリアの市場で売られてたり、地方の小さな村で染められた織物がアポロニアの貨物船に乗っていたりする。”世界”が描かれているのだ。これがオープンワールドに求めてるものだ!
こんな世界を見せつけられたら、感動の涙を流さずにいられない。

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(正直もっと写真撮ればよかった。街中とかもすげぇ良いんだよ)

身体能力の超絶高い主人公の制限なきパルクールアクション
これはやべぇ。マジでやべぇ。バエクはまさに、エジプトのハヤブサ
彼に登れないものはない。ごつごつした岩の山も、要塞の高い壁も、ファロスの大灯台も、ギザのピラミッドも、何でも身体一つで登っていく。
さらにどんな高いところにいても、葦のふわふわが真下に見えていれば、飛び降りることを恐れない。
この身体能力に、エジプトの地元の民衆も称賛と畏敬の声をあげる。農民の女性は心臓が止まる思いをし、子供たちはヒーロー扱いする。
もはやオープンワールドはスタンダードなものになりつつあるといえど、本当に自由で束縛がないかと言ったら違う。高い壁は登れないのがフツーだ。だがバエクはほとんどどんな場所も登っていく。
憧れずにいられない。

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↑飛び降りるたびにおなかの奥がヒュンッてなる(笑)


これが、夢中になれる素晴らしいポイントかな。
とにかくフィールドに尽きる。俺は設定画面で、画面に表示される項目を極力削り、コンパスだけにした。たしかにこれは不便ではある。しかし、クエスト目標とか、体力ゲージとか、そんなものに風景を邪魔してほしくなかった。
パルクールも衝撃的だった。これのおかげで、たとえば砦の攻撃なんかも、柔軟が効いてやりやすかった。
うん、この二つは特にヤバいと思ったな。

バエクもカッコいいしね。
最初は復讐に燃えててとっつきにくいなぁ~と思ってたけど、徐々に愛着湧いてきたわ。
信心深いところが新鮮に映っていいね。ソベク(ワニの神様?)を殺したり利用したりする冒涜に対しては絶対に許さなかったり、お気に入りの奴には葦の原野(天国?)を約束したり、気に喰わない奴にはドゥアト(地獄?)送りになると決めてかかったり、なかなかチャーミングなポイントだったと思う。
プトレマイオス朝末期のエジプトに何だか少しだけ詳しくなったよ。無駄にウィキペディア読んじゃったしね。

ただ正直、キャラクターは弱かったかなぁ~。こいつマジおもろいやん! って人物が、全然いなかった。そういう方針なのか実力なのかしらんけど、シナリオあってRPGって感じにもなってるんだしもうちょい頑張ってキャラクター掘り下げて良かったんじゃね、的な……
例えばバエクは球体なんだよ。どの角度からも見られる。ぶれないけど角度によっては新しい面も見られる。主役級の人物で実際に主人公はってる。一方、結社の面々やクレオパトラプトレマイオス、ヘプツェファは半円形。これこれこの役割だけこなしなさい、という感じ。球の半分は描かれない。だからこそ主役じゃなくて脇役なんだが、まともな球体の人物が主人公のバエクと描写不足のアヤだけなのが、やっぱり物語として淋しいな~と思うわけです……まあいいかもう。


最後に物語の感想。
え、別れるのかよ!?
でも、このラストのシナリオだけは良かった。お互いの愛が失せたわけではないものの、バエクもアヤも、多くの人間を手にかけたり、信じているものに裏切られたり、色んな出来事を経験しすぎた。二人はもはや別の方向を眺めてる。
バエクは地元に残り、父でも夫でもメジャイでもなく、ただのバエクであることを選んだ。そしてアヤは名を捨てて、苦しめられる人々の擁護者からなるチームを結成し、人民の影として生きることを選んだ。
ただ一つ、変わらない信条だけがあると言って…

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総評。
アサシンクリード オリジンズ』面白かった!
これすごいわ。明朝篇とかインカ帝国篇とかあっても面白いとおもう!
とりあえずオデッセイもまた色々進化してるみたいなのでやってみたい。今度は写真がっつり撮ろうかなぁ~。
でも俺にはRDR2とFallout 76とバトルフィールド5も待っている。やべぇな最近。濃すぎ(笑)