エンドロールには早すぎる

ドラマや映画やゲーム。どうしてそれが面白いのかを考察します。

ふたつのカタルーニャ 感想

スペインと言ったら何を思い浮かべる? サッカー? サグラダ・ファミリア? 闘牛? パエリア? ワイン? 大航海時代
歴史を学んだ人ならレコンキスタや太陽の沈まない国という単語にも反応できるだろう。地理が好きならイベリア半島カナリア諸島という単語が好きなはずだ。
ではカタルーニャ独立運動についてはどうだろう? うーん、なんぞそれ? これが俺の反応だ。俺は歴史と地理が好きなのであまりピンとこないのが恥ずかしかった。まあいちおう日本でも、去年、一時期は話題になった。

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サルでもわかるカタルーニャ独立運動についての動画。
仕掛け盛り沢山で見てて楽しいですね。

それはともかく「ふたつのカタルーニャ」というドキュメンタリー番組がNetflixで配信された。
2時間という長さだが、昨今国際ニュース界隈をにぎわせるカタルーニャ問題について興味を持ついい機会になる。
俺もこの問題について興味があったので見てみることにした。結果として面白かった。

スペインは多民族国家だと言うと、うろたえる人もいるかもしれない(俺だが)。え、スペイン人はスペイン人じゃないの、と。残念だが事情は複雑らしい。
俺は慌ててWikipediaでスペインの歴史を確認した。以下、Wikipediaをそのまま引用。
・統一以前の地方意識が根強く、特にカタルーニャバスクなどの住人はスペイン人としてのアイデンティティを否定する傾向にあり、ガリシアカナリア諸島の住民も前二者に比べると、穏健ではあるが、民族としての意識を強く抱いており、それぞれの地方で大なり小なり独立運動がある。
・北スペインのフランス寄りに、バスク語を話すバスク人が暮らしている。バスク民族の文化や言葉は、スペインのみならず他のヨーロッパとも共通することがなく、バスク人の起源は不明である。このことが、バスク人がスペインからの独立を望む遠因となっている。
・歴史と言語からなるカタルーニャ民族の自意識は、アラゴン王国との合同やスペインへの統合を経ても失われず、今日に至っている。

話によると、かねてからカタルーニャ人はスペイン人に尊重されていない、粗雑に扱われていると感じていたようだ。その上、スペイン中央政府による徴税が不当だと主張している。この2点がカタルーニャ人のナショナリズムを高め、2010年頃から独立の機運が高まったとのことだ。(20年前、独立を主張している勢力は米粒のように小さかったとされる)
番組では政治家やジャーナリストなど問題にかかわる重鎮たちへのインタビューが主となっている。
目を引くのは、2017年10月1日に発生した事件だ。これは悪名高い。
この日、「あなたは独立に賛成か? 反対か?」独立への是非を問う住民投票が行われた。スペイン中央政府はこれを違憲として機動隊を出動させた。カタルーニャ州警察が中央政府のこの要求を拒絶したため、国家レベルの機動隊が投入されたのだ。
この時の実際の様子がYoutubeにアップされている。あくまでも一部だが、まあ、ご覧のとおりだ。↓

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↑ちなみに動画の最後の方でインタビューを受けているのが独立派のアイコン、プッチダモン氏だ。カタルーニャにいたら逮捕されてしまうため、彼はドイツやベルギーに亡命している。
この尋常じゃない空気の中で住民投票が行われ、投票率は4割に留まったが、賛成票が9割を超える結果になった。

やはり、これはスペイン中央政府にとって失策だったのではないか。政府は好きに投票させてもよかった。この投票に法的効力はないとして、無効とすればよかった。
こうすることもできた。選挙運動に参加し――スコットランドやカナダがそうしたように――”スペイン統一が良い理由”をスピーチする。民主主義者なら参加する。論破して票を獲得して、住民投票で勝利する。一件落着だ。
だがそうはならず、武力が行使され、一般人は投票を妨害された。繰り返すがこれは暴動やデモではなく、ただの投票だ。これは「屈服しろ」という態度の表れなのか? そう見る者もいるだろう。
結局Youtubeに暴力の様子がアップされ、国内外のニュースで大々的に報じられ、今ではNetflixにドキュメンタリーにされた。政治に興味のない人々や外国人までもがこの独立運動に注目することになってしまった。

別にみんながみんな独立したいかと言えばそうじゃない。カタルーニャ人が独立に躍起になっているというだけの見方はミスリーディングだ。
「ふたつのカタルーニャ」とこのドキュメンタリーのタイトルにあるように、反独立派の勢力も大きい。独立か、統一か、というよりは、投票の権利や、議論が、適切になされないことに対する不満が根底にある。
弾圧されていると民衆が感じたら、それは政府にとって失策だろう。

2018年10月1日。”あの日”から一年。
カタルーニャ州議会ではシウダダノスという反独立派の政党が最も多くの37席を取り、最大議席となった。
とはいえ独立派の3政党を合わせると70席。カタルーニャ州議会は135席なので独立派が絶対多数となる。俺は政治に詳しくないのでこの状況をどう見ればいいかわからないが、まだどうにも転がりそうに見える。
中央政府では今年6月、ラホイ前首相が汚職事件の疑いで失脚し辞任、ペドロ・サンチェス氏(社会労働党)が新しく首相に就任している。サンチェスはカタルーニャの独立を認めないものの、自治権の拡大について是非を問う住民投票を行うことを発表している。


いやー…
Netflixのドキュメンタリーってなんでこう面白いかね? ラストがプッチダモン氏で〆られるなど結構、独立派に寄った構成にも見えるが、まあ、そのほうが映えはする。
怒涛のラストだった。独立派のメンツが大量に逮捕されてる現実。プッチダモン氏は亡命中だし。ああ……これは、歴史だわ。
まあもうちょい重鎮たちだけじゃなくてカタルーニャの庶民のリアルな生活や主張を取り上げてほしかったかな。Youtubeとかで盛んに議論しているのを見る事はできるけど、俺はスペイン語カタルーニャ語?)わからんし。。。
っつーか、カタルーニャ人のデモって凄いな。あの広島優勝パレードと比較してさえ比較ならんしょ……ってレベルの人間の海。熱気。
独立の話となると実は日本も他人事ではいられない。沖縄では今も活発な運動が行われている。まあ今のところ独立は小さな種だが、複雑な問題を抱えた沖縄で、ついさっき県知事選挙の開票が行われた。それに勝った玉城デニー氏は中央政権と対立する政策を掲げている。こんなブログで政治のハナシなんて俺は好きじゃないのでここまでに留めるが、少なくともこういった問題に興味を持つのは好ましいことだ。自分には関係ないと思える遠い場所でのハナシを考える事で、自分の生活に密接に繋がっている物事についての視野が広がる。
俺は直接触れない。でもリアルなハナシとして胸を揺さぶってくる。それが面白いトコだな。Netflixのドキュメンタリーは面白いものが多いね。イカロスだけじゃねえぞってね。感想としてはこんなモン。
歴史は常に動いている。無数の道が開かれていて、行こうと思えば、どの道にも行くことができる。
望むなら、この世界の片隅で、目まぐるしく変わる情勢をいくらでも見ることができる。