エンドロールには早すぎる

ドラマや映画やゲーム。どうしてそれが面白いのかを考察します。

【傑作】American Vandal アメリカを荒らす者たち S2 感想

面白すぎ。マジで面白すぎるわこれ!
17時。夜勤明けなのにぶっ通しで起きて、まぶたを擦りながら俺はNetflixを更新し続け、American Vandal(アメリカを荒らす者たち)のシーズン2の配信を待った。17時03分くらいにようやく配信されたのでかじりついて見た。完全に覚醒していた。
(どうでもいいが邦題が変わったようだ。やはりハノーバー高校落書き事件簿という以前の邦題は、評判が悪かったらしい)

ぶっ続けで見ていたので、感想なりたての感想だ。
ネタバレなしの感想を投下した後、ネタバレありの感想を”大量投下”する。


――↓ネタバレなし↓――


youtu.be

↑トレーラー。いちおう閲覧注意だ。メシを食ってる時には見るな。

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「完璧な人生を送ることはできる。だが法より上に生まれることはできるだろうか?」


何度も言うが面白すぎる。いや、マジで観終わった直後ってこんな感想しか出てこねぇな。
始まりはゆっくりだ。第1話は窮屈に感じるだろう。事件後の生徒の真面目な顔と供述が続き、圧迫感がある。だがピーターとサムが調査に乗り出してからは、ガツンとくる。
勢いよく事態が進んでいくのはシーズン1と変わらない。今回は非常に社会派に振り切っている。
もしかしたらトレーラーの汚すぎる様子を見て視聴をためらう人もいるかもしれないが安心していい。第1話を乗り切ればあとはロクに描かれない。そういう趣向の人は残念だが回れ右だ。
何故面白いかは明白だ。社会に対する怒りと、警告をわかりやすく表現できているからだ。もちろん、愛せるキャラは見つかるし、怒涛の展開に驚かされることばかりだが、行きずりのドラマで終わらないのにはワケがある。
これは俺たちが生きる世界の物語だ。Netflixの作品で何か一つ面白いものを挙げろと言われたらまずこれを強く推す。ナルコスでもハウスオブカードでもストレンジャーシングスでもない。『アメリカを荒らす者たち』だ。


――↓ネタバレあり。注意↓――


別世界とも称されるほどの超名門校で、立て続けに大事件が起こった。昼食後、40人を超える生徒が急に腹を下す『ブラウンアウト』事件。スイカの代わりに人形を割ったらフンが飛び散り人々を襲った『プーピニャータ』事件。厳重態勢で開かれた壮行会でフンの粉が観衆に”噴射”される『シットランチャー』事件。保護者と卒業生は怒り狂い、学校に責任を求めた。数日後、心の傷の癒えない被害者で溢れるものの、少なくとも事態は解決したかに見えた。理由は警察が犯人を捕まえたから。だが真犯人は他にいると主張する者が、American Vandalの制作者、ピーターとサムに助けを求めるビデオメッセージを送信する。かくして彼らの全8話の戦いが始まり、衝撃的な結末を迎える……

犯人は……どうまとめればいいのだろう?
確かに、この事件の真犯人は判明し、裁きを受ける。シーズン1ではうやむやに終わったが、このシーズン2ではハッキリと裁判・判決まで持ち込まれる。すっきりだ。(第1話に出てきた警察以外は。奴らは許せねえ! 日本でもありそうなだけにリアルに激情が駆り立てられる)

だが本当に本当のワルモノは誰だろうか? あいつだけか? もちろん違う。彼は人形師で、パペットを操るように自分の犯罪を他人に代理させた。彼らがワルモノか? もちろん違う。
それでは社会に責任を負わせるべきなのか? 俺たちは2つの人生を生きている。2018年。インターネットが発達し、誰もが自分自身を発信できるようになった社会。俺たちは誰にでも監視され、評価される。俺たちはその社会に、もう一人の自分を創造する。しかしそれは、あまりにも危険な選択だった。今日では、インターネット上の人生に気を取られ過ぎて、自分を憂鬱状態に追い込む人が多い。2018年。俺たちは史上最も無防備な時代を生きている。この社会がワルモノなのか……? 
登場人物を追いながら、感想を詰めていこう。

ピーターサムについては改めて記しておくようなことは特にない。彼らはドキュメンタリー制作者で、探偵気取りで、他の人間が隠したい真実を暴いていく。それが役目だ。今回俺たち視聴者が信用できるのは彼らだけだ。

キーパーソンの一人、ケヴィンについて考えてみよう。彼は3つの”汚すぎる事件”の容疑者として告発される。しかも、親友にチクられて。
最初は否定していたが、のちに自分が犯人だと”自白”する。退学して、GPSを体に括り付けられて軟禁状態だ。言わばシーズン1のディラン枠だ。
一説によると、犯人じゃないのに自分が犯人だと言ってしまう例は、とても多いそうだ。実際に膨大な量の実例があり、心理学的な見地からもそれを裏付ける。ケヴィンは、”自白を強要された”とピーターに主張する。彼は学校と警察によって、犯人に仕立て上げられたというのだ。
この警察と学生部長による手口が第1話で披露されるが、怖すぎて固まってしまった。(日本でもままありそうな光景だ…)自白を強要する技術は、リアルに参考になって寒気がした。この時のラストスパートが圧巻で、俺はケヴィンのおばあちゃんに同情して泣いた。かわいいかわいい大事な孫が、大人たちの巧みな戦術にハメられて、圧倒的な権力に潰されてしまったのだ。心中、推し量るに余りある。
彼は、日頃から自分が笑いものにされていると感じていた。幼少期の些細な出来事が彼の人生を変えた。嫌なあだ名をつけられ、無邪気に残酷に虐められるようになった。彼は変人になりきって、自分を保とうとした。俺は俺だと周囲を気にしてないふりをしたかった。しかし、失敗していた。無理だった。できるわけがなかった。彼は普通の高校生で、この世界で孤独だった。
そこをつけ込まれた。

もう一人のキーパーソン、ディマーカスも興味深い。バスケ界のトッププロスペクトで、成功は確実だった。彼はスターとしての人生を歩んできた。望むものはなんでも手に入りそうに見える少年だった。目は光で溢れていて、他人を(本人曰く)いい意味で見下し、誰とでも交友関係を築くことができた。彼にとって都合の悪いことがひとたび起これば、チームメイトや、友人や、学校関係者が、死に物狂いで彼をフォローした。
曰く、彼は特権を持つ、法の外に生きる人間なのだという。
彼は序盤から、この連続事件の真犯人じゃないかとピーターによって推理される。技術的に可能だったからだ。立ち入り禁止の場所も、”特権”持ちのディマーカスなら好きに立ち入ることができたし、彼には有効なアリバイがなかったし、運の悪いことに、犯人しか持ちえないハズの「ザ・タードバーグラー」の名刺が財布に入っているのを目撃されていたからだ。動機は復讐ではなくいたずらだったのではないか? 以前、彼は先輩が罪を犯してもスターであるが故に裁かれなかった事件を目の当たりにしている。自分もそうなると信じているのでは……?
ディマーカスは間違いなくテーマを表すキャラクターの一人だ。ありがちなことだが、彼も孤独を感じていた。スターとして成功が約束されている彼は、コート以外の人生を”偽物”に感じていた。誰もが仮面を被り自分に接しているような気がしていた。彼もまた、際限ない孤独に苦しんでいた。
そこをつけ込まれた。


周囲から爪弾き者にされていると感じる人間は、つけ込まれやすい。世界を嫌いになっているが故に、純粋だからだ。
彼らのような人間は真っ先にカウンセリングが必要なのだが、適切な人間の手に渡ることは稀だ。不運にも、ゲームオブスローンズのリトルフィンガーさながら、良心の欠片もないかのように人を騙し、コマのように操り、犯罪を遂行させる危険な人物に目を付けられることもある。そこでヘマをすれば、彼らの人生も崩れ落ちる。
ケヴィンやディマーカスや、ジェマや、よくわからんけどウザそうなあの教員もヘマをした。やらかしてしまった。一方で、孤独に苛まされながらも、悪魔に打ち克った者もいる。オムツのアイツは、自分の良心に訴えることで、卑劣な犯罪には手を染めなかった。代わりに、自分の恥ずかしい画像が流れる事になってしまったが……


実を言うと眠いのでまた明日更新する。
一つ言えるのは待ってた甲斐があったってこと。期待を裏切らない。シーズン3の更新も頼むぜ!