エンドロールには早すぎる

ドラマや映画やゲーム。どうしてそれが面白いのかを考察します。

【傑作】American Vandal アメリカを荒らす者たち S2 感想

面白すぎ。マジで面白すぎるわこれ!
17時。夜勤明けなのにぶっ通しで起きて、まぶたを擦りながら俺はNetflixを更新し続け、American Vandal(アメリカを荒らす者たち)のシーズン2の配信を待った。17時03分くらいにようやく配信されたのでかじりついて見た。完全に覚醒していた。
(どうでもいいが邦題が変わったようだ。やはりハノーバー高校落書き事件簿という以前の邦題は、評判が悪かったらしい)

ぶっ続けで見ていたので、感想なりたての感想だ。
ネタバレなしの感想を投下した後、ネタバレありの感想を”大量投下”する。


――↓ネタバレなし↓――


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↑トレーラー。いちおう閲覧注意だ。メシを食ってる時には見るな。

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「完璧な人生を送ることはできる。だが法より上に生まれることはできるだろうか?」


何度も言うが面白すぎる。いや、マジで観終わった直後ってこんな感想しか出てこねぇな。
始まりはゆっくりだ。第1話は窮屈に感じるだろう。事件後の生徒の真面目な顔と供述が続き、圧迫感がある。だがピーターとサムが調査に乗り出してからは、ガツンとくる。
勢いよく事態が進んでいくのはシーズン1と変わらない。今回は非常に社会派に振り切っている。
もしかしたらトレーラーの汚すぎる様子を見て視聴をためらう人もいるかもしれないが安心していい。第1話を乗り切ればあとはロクに描かれない。そういう趣向の人は残念だが回れ右だ。
何故面白いかは明白だ。社会に対する怒りと、警告をわかりやすく表現できているからだ。もちろん、愛せるキャラは見つかるし、怒涛の展開に驚かされることばかりだが、行きずりのドラマで終わらないのにはワケがある。
これは俺たちが生きる世界の物語だ。Netflixの作品で何か一つ面白いものを挙げろと言われたらまずこれを強く推す。ナルコスでもハウスオブカードでもストレンジャーシングスでもない。『アメリカを荒らす者たち』だ。


――↓ネタバレあり。注意↓――


別世界とも称されるほどの超名門校で、立て続けに大事件が起こった。昼食後、40人を超える生徒が急に腹を下す『ブラウンアウト』事件。スイカの代わりに人形を割ったらフンが飛び散り人々を襲った『プーピニャータ』事件。厳重態勢で開かれた壮行会でフンの粉が観衆に”噴射”される『シットランチャー』事件。保護者と卒業生は怒り狂い、学校に責任を求めた。数日後、心の傷の癒えない被害者で溢れるものの、少なくとも事態は解決したかに見えた。理由は警察が犯人を捕まえたから。だが真犯人は他にいると主張する者が、American Vandalの制作者、ピーターとサムに助けを求めるビデオメッセージを送信する。かくして彼らの全8話の戦いが始まり、衝撃的な結末を迎える……

犯人は……どうまとめればいいのだろう?
確かに、この事件の真犯人は判明し、裁きを受ける。シーズン1ではうやむやに終わったが、このシーズン2ではハッキリと裁判・判決まで持ち込まれる。すっきりだ。(第1話に出てきた警察以外は。奴らは許せねえ! 日本でもありそうなだけにリアルに激情が駆り立てられる)

だが本当に本当のワルモノは誰だろうか? あいつだけか? もちろん違う。彼は人形師で、パペットを操るように自分の犯罪を他人に代理させた。彼らがワルモノか? もちろん違う。
それでは社会に責任を負わせるべきなのか? 俺たちは2つの人生を生きている。2018年。インターネットが発達し、誰もが自分自身を発信できるようになった社会。俺たちは誰にでも監視され、評価される。俺たちはその社会に、もう一人の自分を創造する。しかしそれは、あまりにも危険な選択だった。今日では、インターネット上の人生に気を取られ過ぎて、自分を憂鬱状態に追い込む人が多い。2018年。俺たちは史上最も無防備な時代を生きている。この社会がワルモノなのか……? 
登場人物を追いながら、感想を詰めていこう。

ピーターサムについては改めて記しておくようなことは特にない。彼らはドキュメンタリー制作者で、探偵気取りで、他の人間が隠したい真実を暴いていく。それが役目だ。今回俺たち視聴者が信用できるのは彼らだけだ。

キーパーソンの一人、ケヴィンについて考えてみよう。彼は3つの”汚すぎる事件”の容疑者として告発される。しかも、親友にチクられて。
最初は否定していたが、のちに自分が犯人だと”自白”する。退学して、GPSを体に括り付けられて軟禁状態だ。言わばシーズン1のディラン枠だ。
一説によると、犯人じゃないのに自分が犯人だと言ってしまう例は、とても多いそうだ。実際に膨大な量の実例があり、心理学的な見地からもそれを裏付ける。ケヴィンは、”自白を強要された”とピーターに主張する。彼は学校と警察によって、犯人に仕立て上げられたというのだ。
この警察と学生部長による手口が第1話で披露されるが、怖すぎて固まってしまった。(日本でもままありそうな光景だ…)自白を強要する技術は、リアルに参考になって寒気がした。この時のラストスパートが圧巻で、俺はケヴィンのおばあちゃんに同情して泣いた。かわいいかわいい大事な孫が、大人たちの巧みな戦術にハメられて、圧倒的な権力に潰されてしまったのだ。心中、推し量るに余りある。
彼は、日頃から自分が笑いものにされていると感じていた。幼少期の些細な出来事が彼の人生を変えた。嫌なあだ名をつけられ、無邪気に残酷に虐められるようになった。彼は変人になりきって、自分を保とうとした。俺は俺だと周囲を気にしてないふりをしたかった。しかし、失敗していた。無理だった。できるわけがなかった。彼は普通の高校生で、この世界で孤独だった。
そこをつけ込まれた。

もう一人のキーパーソン、ディマーカスも興味深い。バスケ界のトッププロスペクトで、成功は確実だった。彼はスターとしての人生を歩んできた。望むものはなんでも手に入りそうに見える少年だった。目は光で溢れていて、他人を(本人曰く)いい意味で見下し、誰とでも交友関係を築くことができた。彼にとって都合の悪いことがひとたび起これば、チームメイトや、友人や、学校関係者が、死に物狂いで彼をフォローした。
曰く、彼は特権を持つ、法の外に生きる人間なのだという。
彼は序盤から、この連続事件の真犯人じゃないかとピーターによって推理される。技術的に可能だったからだ。立ち入り禁止の場所も、”特権”持ちのディマーカスなら好きに立ち入ることができたし、彼には有効なアリバイがなかったし、運の悪いことに、犯人しか持ちえないハズの「ザ・タードバーグラー」の名刺が財布に入っているのを目撃されていたからだ。動機は復讐ではなくいたずらだったのではないか? 以前、彼は先輩が罪を犯してもスターであるが故に裁かれなかった事件を目の当たりにしている。自分もそうなると信じているのでは……?
ディマーカスは間違いなくテーマを表すキャラクターの一人だ。ありがちなことだが、彼も孤独を感じていた。スターとして成功が約束されている彼は、コート以外の人生を”偽物”に感じていた。誰もが仮面を被り自分に接しているような気がしていた。彼もまた、際限ない孤独に苦しんでいた。
そこをつけ込まれた。


周囲から爪弾き者にされていると感じる人間は、つけ込まれやすい。世界を嫌いになっているが故に、純粋だからだ。
彼らのような人間は真っ先にカウンセリングが必要なのだが、適切な人間の手に渡ることは稀だ。不運にも、ゲームオブスローンズのリトルフィンガーさながら、良心の欠片もないかのように人を騙し、コマのように操り、犯罪を遂行させる危険な人物に目を付けられることもある。そこでヘマをすれば、彼らの人生も崩れ落ちる。
ケヴィンやディマーカスや、ジェマや、よくわからんけどウザそうなあの教員もヘマをした。やらかしてしまった。一方で、孤独に苛まされながらも、悪魔に打ち克った者もいる。オムツのアイツは、自分の良心に訴えることで、卑劣な犯罪には手を染めなかった。代わりに、自分の恥ずかしい画像が流れる事になってしまったが……


実を言うと眠いのでまた明日更新する。
一つ言えるのは待ってた甲斐があったってこと。期待を裏切らない。シーズン3の更新も頼むぜ!

【傑作】ヴァイキング ~海の覇者たち~ シーズン1 感想

またこの手のドラマだ。残虐さが売りで、観る者を苦しめる。「どうよ、この作品えぐいでしょ?w」とでも言いたげな制作陣の薄ら笑いが透けて見える。
俺はそういう作品は嫌いだ。でもこの「ヴァイキング」は好きだ。傑作だ。とても面白い。

あらすじと感想を書いていく。
俺の基準はめちゃくちゃなので信用するな。


――↓ネタバレなし↓――

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シーズン1は9話構成。1話45分程度。
明らかに話が続く感じで終わる。

これは……厳しく、冷たい、男のドラマだ。
情け容赦ない。

まず何と言っても主人公のラグナル・ロズブロークだろう。
怖い。怖すぎる。でもカッコいい…
ラグナルは夢追う若者だ。未知の開拓者だ。妻と子供もいる父親だ。頼れる兄貴や仲間、奴隷を持っている。敵対する勢力には事欠かない。
男ならみんなラグナルになりたがるだろう。そう思うようなカリスマ性あふれる人物である。

ラグナルとその仲間は最初、片田舎の蛮族でしかなかった。農地を持ち、畑を耕し、季節になったら東の土地から掠奪する。変わらない俺たちの毎日。それでいい奴らもいた。だがラグナルはそうじゃなかった。
西に豊かな王国があると信じるラグナルは、仲間を集めて未知の世界へ航海しはじめたのだ。そして実際に、それはあった。ラグナルはイングランドを発見した。
それから先は……言うまでもない。

このドラマは史実に基づいている。脚色されているとはいえ、史実をベースにしているのでヴァイキング好き、海賊好きにはたまらんだろう。
血と暴力。誇りと妬み。宗教、好奇心。このドラマが表しているのは紛れもない「現実」だ。一度それを目撃したら、心臓を鷲掴みにされた気分になるだろう。血が滾っているのだ。


――↓ネタバレあり。注意↓――


”それ”が始まるまでは、北欧の昔の暮らしを眺めるだけのほのぼのとしたドラマだった。息子に愛情を注ぎ、妻と戯れ、夢を語り権力に抑えつけられる……船を造り、北欧の神々を信奉する。
人々が「掠奪」と話していてもリアルに感じなかった。
だが”それ”が始まった。夢と希望と嵐に溢れた航海を終えて上陸すると、飢えたヴァイキングたちはさっそく仕事にとりかかった。リンディスファーン修道院の”掠奪”だ。

修道士アセルスタンにとっては悪夢の始まりだっただろう。彼は敬虔なキリスト教徒で、聖典の写本をしながら穏やかな日々を過ごしていた。
それが、ヴァイキングの襲来によって一変してしまった。
不穏な空気。招かれざる客。みんな聖堂に集まり、嵐が過ぎ去るのをただ祈る……だが異教徒に祈りは通じない。ラグナルは聖堂の扉を開け、ヴァイキングたちは修道士を殺しはじめた。掠奪が繰り広げられる。
ほとんど無抵抗に近かった。修道士たちは大体殺された。財宝は奪われた。アセルスタンは布教の為に北欧の言葉を知っていたので、ラグナルに奴隷として生かされた。利用価値ありと判断されたのだ。
この掠奪の描写はあまりにも、残虐だった。いちおうラグナルが主人公で、彼の仲間は主人公一味ということになるのだが、どこからどうみても”悪党”である。俺は震え、胸がどきどきした。俺は罪深き人間になってしまったかのような気分に陥った。
視聴を継続するべきか悩んだ。確かに面白いが、悪の衝撃が強すぎる。だがこうも考えた。おそらくこれは、洗礼なのだ。
俺は覚悟を決めた。俺は8世紀のヴァイキングの感覚を理解するように努めた。そうでなければ正気を保つことはできない。とてつもない悪の波に呑まれたくなければ、俺自身がヴァイキングになるしかないのだ。

リンディスファーン修道院 - Wikipedia
↑ちなみにリンディスファーン修道院は実在したようだ。

最初に対立するのは首長のハラルドソンだ。ラグナルの属する小さなコミュニティの指導者だが、年老いて保守的になっている。
似たようなビジュアルの仲間が多い中、ハラルドソンのビジュアルは特徴的なので一発で覚えられる。正直助かる。彼の政治的手腕はよくわからなかったが、少なくともそれなりの男ではあったようだ。忠実な人間が多いから、それはなんとなくわかる。
そして実際、ただ裏から工作したり、暴力沙汰を部下に任せたりしてた最初のほうまでとは違い、最期の瞬間は、かっこよかった。現状維持が第一のハラルドソンも、誇り高きヴァイキングの一員で、真の男だと証明した。
ラグナルの決闘の申し出を受けたのだ。普通なら考えられないことだ。だって犯罪者の決闘の申し出をいちいち受けていたら、務まるものも務まらないだろう。ハラルドソンは一体、ラグナルに何を見たのだろう?
彼の心情が明かされる場面があった。彼はラグナルに昔の自分を重ねていた。こういうわけだ。昔の自分に似ていたからこそ苛立ち、自分と違い夢を実現していく様子を見て、我慢ならなかったのだ。
彼らは一対一で戦った。この戦いの描写があまりにも誇り高くて笑ってしまった。ああ、ヴァイキングよ…
ハラルドソンは敗れ、死を受け入れた。彼の魂はヴァルハラへ迎えられるだろう。そしてラグナルは、彼に代わって新しい首長となった。

そんなラグナルを複雑な目で見ている男がいた。ラグナルの兄貴のロロだ。一言で言えば彼は蛮人だ。暴力とセックス。まったく男そのものだ。
名声を獲得していく弟を近くで見ながら、無名のままの自分の立場に明らかにイラついている。弟との信頼はありそうだが、雲行きは怪しい。最終話では弟を裏切るよう、敵に言いくるめられてしまった。いいのかそれで。
どうせ裏切るなら自分で旗揚げしろ。そうでなければ、結局は誰かの下につくことになる。ラグナルじゃなくても、ボルグの下につくことになるんだぞ。本当にそれでいいのか。
ただの兵隊のままで満足したくないのなら、名声が欲しいのなら……自分で何かを成し遂げなければならないのだ。

その成し遂げられる人物こそこのドラマの主人公だ。何といってもラグナルの魅力に尽きる。こいつの表情は、まさに文字通り神懸っている。
彼は”ヴァイキング”そのものだ。正直何を考えてるかわからないが、それが魅力でもある。こういう怪しい雰囲気のある奴は、超カッコいい。
ヴァイキングとなると、野蛮で暴力的で、良心なんてまるで持ち合わせていないように見える。だがもちろん決してそんなことはない。
確かに、蛮族そのものな時もある。修道院の掠奪なんて最もだが、イングランドの王国との交渉の席で、食べ物を貪り食い、音楽を嘲り、面白がって皿に頭をぶつけて割ったりする様子は、まさに野蛮人そのものだ。
だがそれだけだろうか? 彼らの社会に限っては、意外と理性的な側面も見えてくる。裁判の様子が代表例だ。ハラルドソンは量刑に基準を持っていたし、ラグナルの妻のラゲルサには明らかに慈悲の心がある。
ラグナルも奴隷のアセルスタンに対して、寛大な扱いをしていた。拘束はせず、妻と3Pに誘い、自分が掠奪で不在の時の子守まで任せてしまう。アセルスタンも絆されてしまったのか、いつしか聖書を読まなくなり、朽ちさせてしまったほどだ。


確かに残酷なドラマだ。だが彼らの生活そのものが映し出されている。それは現代人の生活にも通じる。
俺たちは今も戦っているのだ。
俺たちは挑戦しなければならない。俺たちは欲しいものを勝ち取らなくてはならない。俺たちは与えられるのをただ待っていてはいけない。
説得力を感じるからこそ、俺はこの作品に夢中になれる。男の血が滾るのだ。


それにしてもヴァイキングは強いね。イングランドの軍なんてお遊びにしか見えないくらいだった。
やべえだろ。どんだけ勝つんだよ。普通に。どんだけ強いんだよ…

【傑作】このサイテーな世界の終わり 感想

ティーンに大人気のドラマはいつの時代も変わらない性質を持っている。
少年と少女が出会い、笑いあり涙ありの冒険が始まり、レールから外れて…
「このサイテーな世界の終わり」がどうして面白いのか、まとまりのない文章でてきとうに書き殴っていこうと思う。

ネタバレはある。
だがネタバレなしの作品紹介と簡単な評価も用意してある。親切心というよりか俺がそうしたいだけだ。こういう項目があると頭がクリアになる気がする。
ただし評価の基準はめちゃくちゃなので信用できない。


――↓ネタバレなし↓――


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「僕はジェームス。間違いなくサイコパスだ」


自分がサイコパスだと信じる17歳の少年・ジェームスは、そろそろ本物の人間を殺してみたいと感じていた。
そんな彼に、アリッサという少女が話しかけてくる。どうやら興味を持たれているようなので、ジェームスはこいつにしてやろうと決める。
アリッサは何というか、病んでる。メンヘラっぽい。かわいい顔してやることなすことキチガイっぽい。ジェームスは興味を持つ。
アリッサはジェームスに「旅に出よう」と持ち掛け、ジェームスは了承する。殺すのにいい機会を探せるからだ。
だがもちろんキチガイキッズ二人のロードトリップが普通にまわるはずがなかった。
ほのぼのした空気を出しながら、サスペンスフルな一面もある彼らの旅の行方を、俺=視聴者は見守る事になる――…

そして俺は彼らを愛さずにはいられなくなる。


――↓ネタバレあり。注意↓――


Why does the sun go on shining?
Why does the sea rush to shore?
Don't they know it's the end of the world
'Cause you don't love me anymore?
  - "The End Of The World" Skeeter Davis


憎いね。エンディングに流れる音楽がこれ。Fallout 4でも流れてたやつですね。
言わせてくれ。完璧だよ…

ジェームス!!!!!!

お前は、男だ。
俺が保証する。
ジェームスよ、かっこよかったぞ。


二人の冒険は、はじめはまあ、言っても、微笑ましいものだった。
父親の大切な車を盗んで爆発させたり、見ず知らずの他人の家に侵入して好き勝手に振る舞ったりしていたとは言え、まあ、微笑ましいものだった。
ジェームスがアリッサを殺せそうで殺せないのも中々に「あ、こいつ…絆されていってるな」って感じで、紆余曲折あれほのぼのした空気で終わるものだと想像していた。

だがこのドラマ、かなり厳しかった。
彼らは侵入する家を誤ったのだ。
不幸にも、この家の主は、「本物のサイコパス」だった。少女を誘拐して家に連れ込み、嬲り殺し、その様子を撮影してスナッフ・ビデオとして保管しているような外道だったのだ。
家主が帰ってきて、アリッサは襲われそうになった。アリッサもそれまでキチガイに振る舞ってはいたものの、実のところ普通の少女だった。抵抗できずに、涙があふれる。少女が悪人の手に落ちると、ろくでもない結末を迎える。
だがそうはならなかった。すんでのところで、アリッサは無事に助かった。なぜか? ジェームスが家主の首に、ナイフを突き刺して殺害したからだ。

かくしてほのぼのとしたロード・トリップは終わりを迎え、サスペンスフルな逃亡劇が始まる。
俺は震え、夢中になる。

警察が出動し、指名手配され、大事になる。
結局、逃亡する中でもジェームスとアリッサには紆余曲折ある。
地味に印象に残ったシーンがある。ガソリンスタンドであくせくと単調な労働に従事するアルバイトくんのシーンだ。
店長はジェームスたちに気付き通報しようとするのだが、アルバイトくんは意を決したかのように反旗を翻す。上司を密室に閉じ込めて、物資をジェームスとアリッサにぜんぶあげちゃったのだ。
彼もまた自分の世界に嫌気がさし、どこか遠くに逃げたがっている若者だった。だがジェームスとアリッサの「二人の世界」に、他の仲間は要らないらしい。アルバイトくんは置いてけぼりになってしまった。
ちょっと可哀想だった(笑)


現代の日本にも、鬱憤を抱えて過ごす若者たちが大勢いる。
彼らには別の道も無数にある。それなのにメチャクチャな世界に歪められ、その道を唯一の道だと思い込んで生きている。
そんな若者たちにとって、ジェームスとアリッサは、救いの光なのだ。
そして彼らのロード・トリップは、若者たちの夢に他ならない。
だから共感する。ジェームスが笑えば俺も笑う。アリッサが喜べば俺も喜ぶ。もはや憑依してるも同然だ。故に最後のシーンでは、胸が張り裂けることになった。
俺は死んだ。世界が終わった。


今後、アリッサはどうすればいいのだろう?
さんざん、”残された者”の気持ちがどうなのか押し出してきていたのに、ジェームスもそれでよかったのか?
いやわかるぜ。アリッサを売ることなんてできるワケがねえ。起こってしまったものは起こってしまったものだ。時は巻き戻せず、アリッサの人生は続いていく。
そう、「このサイテーな世界の終わり」だ。これから先に待っているものは、ただ想像することしかできない。

ちなみにこのドラマ、かの「ゲーム・オブ・スローンズ」でヤーラ・グレイジョイ役を演じているジェマさんが出演している。
彼女の役どころは、逃亡劇を繰り広げるジェームスとアリッサを追っているものの、彼らのよき理解者になろうとしている警察官だ。
なかなかいい大人なのだが、最後まで彼女が「二人の世界」に入り込むことはできなかった。彼らの世界は、誰も触ることができないのだ。
希望の光としてアリッサのよき理解者になってあげてくれ…


ティーンが夢中になるのも頷けるハナシだ。
俺はティーンというには老けすぎているが、夢中になっている。

ちなみにシーズン2の制作が決定しているらしい。
正直要りますか? 俺は要らんと思う。だって完璧なエンディングだから。
まあ見るけどね。

【傑作】American Vandal ハノーバー高校落書き事件簿 感想

このブログを開設した主な理由は、傑作を楽しんだ後に記録しないのは数年後の自分が後悔することがわかってきたからである。
だが俺がその重い腰をあげることはなかった。まずめんどくさいし、確固たる基準のない自分の”評価”なんてクソだ、と知っているから。
その俺を突き動かしたきっかけ? 実に些細なものだ。Netflixオリジナルシリーズの「American Vandal(邦題:ハノーバー高校落書き事件簿)」のシーズン2のリリースが、残り一週間に迫ってるっていうのに、ググっても日本語の情報一つ出てこない。はぁ? って思うだろ? 俺はTwitterとかインスタグラムとかそういうソーシャルメディアをほぼ利用してないので、グーグルの検索結果だけが俺の世界になる。こういう誰とも話題を共有できないという悔しさ、この悔しさをぶつけられる何かを探して、そうだブログを書こうと思い至ったわけだ。

俺は”通”ではない。俺の感想は大衆と似ているかもしれないし全然違うかもしれない。間違っているかもしれないし、後から考えが変わるかもしれない。
自分にも”柔軟さ”が大切だと言い聞かせて、その作品がどうして俺の中で傑作なのか? どうして記事にするほど心を突き動かされたのか? というのを考察していこうと思う。

さて、というわけで今日は、このきっかけに縁あり、ってことで、American Vandalのシーズン1の感想を記録していく。

ちなみにネタバレはする。なぜこれから作品を考察するって時に、心を揺さぶる局面のことをひた隠しにしてしまわねばならない?
とは言え、そんな事を抜かしていては、せっかく訪問してくれた人に失礼だ。いちおう全世界公開だからな。
こんな辺境の小さな小さなブログに、作品を観てない人がたどり着く可能性があるとは思えないが、万が一の為に、ネタバレしないでほしい勢のために、簡単な紹介と評価を用意しておいた。
これから観る人は参考にするのもいいが、俺の基準はメチャクチャなのであまり信用しないことだ。

――↓ネタバレしてない↓――

youtu.be

↑American Vandalのトレーラーだ。
この時点で心を惹かれる。

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全8話で1話20分程度という手軽なシリーズ。
とっても面白い。ネタバレしない範囲で紹介しよう。

「君のことを教えて」
「俺のこと? なんだよそれ、馬鹿げた質問だな」

どこにでもいそうな高校生のガキや教員たち。しょうもない事件。俺はウイスキー片手に鑑賞し始める。
しょうもない事件なのに、殺人事件でも起こったかのような深刻な雰囲気で調査が進んでいく。俺は釘づけになる。
”真実を究明”していくたびに、事態はどんどん複雑になっていく。予想外の手がかりが出てきたり、若者たちのリアルな日常が撮影されたりする。その中で暴く必要のない秘密まで暴く。傷つかなくていい人が傷つく。俺は、もう完全にこの世界の一員になっている。
生きていくうえで大切なメッセージが随所に込められていて、そのたびに俺はハッとさせられる。俺はウイスキーを流し込み、食道を荒らす。俺は泣く。
全8話の旅を終え、俺は震える。
面白すぎると言って一人で部屋ではしゃぐ。
ああこれは傑作だ。どうしてこんなに面白いんだろう???


――↓ネタバレしてる。注意されたし↓――


まず、俺が、ドラマとか作品とかで何を一番大切にして観ているかを明かそう。
キャラだ。
キャラが魅力的かどうかに尽きる。
このキャラの活躍が見たい、どうなっていくのかを見てみたい、そういうモチベーションで、テレビドラマっていうのは見続けられる。
だから俺がわざわざ記事にして語るのは、キャラが中心になる。

さて、American Vandalではどういうキャラが動いているのかを紹介しよう。
まずこの二人に着目しておけ。ピーター・マルドナードという陰キャっぽいメガネ(一応主人公)と、ディラン・マクスウェルというヤンキーっぽい社会不適合者だ。
こいつらの動きを追っておけば、話についていける。こいつらが話の"肝"だ。脇キャラが非常に素晴らしいドラマなので、心を揺さぶるキャラクターは他にもいるが、こいつらが主に話を作る。

ディランはヤンキーだ。悪い事が起これば大体こいつのせいにされる。実際こいつはとんでもない悪童で、人々を困らせることで悪名高い。
「一日一チ○コ」がモットーで至る所に落書きをする。親と手を繋いでる子供に屁をかまして逃げる。しかもそれを動画にして全世界に晒すという湿気たYoutuberだ。退学して配達員に就職するのはいいものの、客に届ける食いもんを遠慮なしに食らっちまうというキングオブヤンキーだ。
こいつが巻き込まれたのは、「教員の車全てにチ○コのラクガキが書き込まれる」という、しょうもないものだ。だがしょうもないものでも、被害総額は何万ドルにもなる、立派な犯罪だ。
普段の素行が悪いので、ヤンキーは即・犯人扱いされる。おっと、ここで慌てて雑な脚本だと批判するべきではない。確かかどうかはおいておいて、もっともな理由が何個もあるのだ。
普段からチ○コの落書きをしてる、ってだけじゃない。犯行時刻のアリバイがヤンキーにはない。防犯カメラの記録がいじられているが、ヤンキーは記録をいじる権限を持つ”放送委員”の一人だ。そして決定的なのが、”優等生”アレックスの「彼がそこにいた」発言。目撃者がいるのだ。材料は十分そろっていたので、教育委員会は彼を退学処分に決めた。
そしてヤンキーは退学した。初めは自由だと逆に喜んだが、大学進学への道は閉ざされ、弁償金などの支払いのために時給10ドルで毎日あくせくと働くハメになった。徐々に孤独感を強めていき、彼女には見放されつつあると感じている。

そこでヤンキーに不思議な縁を持つキャラ、陰キャメガネ・ピーターくんだ。メガネはヤンキーと同じ”放送委員”の一員だったのだ。
メガネには日頃から、「映画をつくりたい」という欲求があり、実際に制作しているが、動画サイトでの評判はからっきしだ(この点もヤンキーと共通している)。そんな彼が、目の前に降って注いだ”面白い事件”というチャンスを見逃すわけがなかった。「真実を明かしたいだけ」ときれいごとを並べながら、メガネはドキュメンタリー制作に取り掛かる。
彼は友人のサムと一緒にホワイトボードにペタペタ写真を張りペンで相関図を書きながら、真実を検討していく。メガネは、ヤンキーの無実を証明できる側面もあると信じているのだ。
彼の鮮やかな推理を紹介しよう。ヤンキーは普段からチ○コの落書きをしているが、普段描いているチ○コと今回描かれたチ○コの形が違うことを発見した。次に犯行推定時刻の件を考えた。聞き込みと、移動時間や落書きする時間、カメラをいじる時間にどれくらいかかるかを実際に検証して、ヤンキーの犯行時刻のアリバイを立てた。彼にそんな暇はなかったと結論付けたのだ。しかもヤンキーは底なしの馬鹿なので、防犯カメラの映像なんて消せないと弁護した。そして決定的となった目撃者、優等生アレックス。彼の発言は実際どれくらい信用できるのかを確認した。彼はパーティでビールを9本も飲んだと自慢している。彼は同級生が病気で早世した際にSNSで親友であったかのように呟き、他の生徒に咎められている。彼の言動を知れば知るほど、彼が目立ちたがりの”誇張屋”という印象が強くなる。……何よりも、イケてる度13点くらいのアレックスが、高校で最高クラスのイケてる度97点の美少女・サラに、手で抜いてもらったとまで吹聴している。もしかしたら、この優等生の証言は信用できないのではないか? 実はハノーバー高校では、「チ○コ落書き事件」が発生した影響で、副校長により昼食を外で食べるのを禁止されてしまっていた。この禁止は、誰かが「有効な証言」をしなければ解除されない。そして禁止から3日後、アレックスは”証言”した。アレックスはハノーバー高校にランチを取り戻した。この証言で一躍”時の人”になり、SNSのフォロワーを増やした。だがこれは、アレックスが人気取りのために嘘の告発をしたかもしれないのだ。

下線で引いた論点を軸にしてドラマが進んでいくわけだが、物事がそう単純に終わるわけがなかった。登場人物はどいつもこいつも一癖二癖あり、リアリティがあり、とにかく優れているのだ。
輝いている脇キャラを紹介する。

「MY CAVE, MY RULES」がモットーの歴史教師は、生徒がセクシーすぎるという発言をして、その姿がドキュメンタリーとして世界に公開されたので、問題になり、作中で”退職”する。メガネの”自己満映画制作”の割を喰ってしまった可哀想なキャラの一人だ。
メガネの始めたこと、すなわちジャーナリズムは、現実世界にいかに影響を及ぼすか? というこの作品のテーマの一つをリアルに感じるキャラの一人になっている。
彼はナイスガイだ。生徒に人気でありたいという欲求があからさまだという見方を大半の生徒がしている悲しいキャラだが、まあ良い奴だ。俺は自分のルールで生きてるぜとでも言いたげな振る舞いだが、気取ってる感が暑苦しいので、現実の日本にいても人気はいまひとつだろう。

ヤンキーから目の敵にされていて、ヤンキーを目の敵にしているスペイン語教師も面白い。彼女は基本的には良い教師だ。彼女は執拗にヤンキーに絡むので、ヤンキーを嫌っているかもしれないが、彼女なりの教育心の表れにも取れる。
取りあえずヤンキーはこの教師をめちゃくちゃ嫌ってる。嫌いすぎて嫌いすぎて、最後には切ない末路を迎える事になる。お互いがお互いを嫌ったままでは、大抵はろくなことにならない。

アレックスみたいな奴、いるんだよな。イキった陰キャ
いいか? お前は自分が無害だと思ってるかもしれないがメチャクチャうぜぇし、目障りだし、実際にお前の告発のせいで他人の人生がめちゃくちゃになってるんだぞ。
ディランがやったって? 間違いないって? お前、実際はフード被ってて顔が見えなかったんじゃねえか。何が体格が似ていただ? 何が勘違いしちゃっただぁ? クソが! 言い訳してんじゃねえ!
"人は思い込む。人は話を誇張する"。テーマが体現されたキャラだ。

そのアレックスを抜いてやったのが全生徒の憧れ、モデルみたいなべっぴんさんのサラだ。
彼女もメガネの”自己満映画制作”の被害者になった。暴かれる必要なんてなかったのに、彼女は秘密を暴かれた。サラは15人以上と関係を持ったふしだらな女性かのように放送された。そのせいで父親に死ぬほど叱られ、世間からの目を気にして生きて行かねばならなくなった。彼女の一件は、メガネに深い反省を促すことになる。
サラにもいいトコはある。パーティで中国人が飲み過ぎて倒れたら、真っ先に緊急措置を施した。人は単純ではない。そもそも股が緩いから、それがなんだ? そんなことで人をすべて判断するべきではない。だが現実は判断される。”人は偏見を持つ”。

ヤンキーの彼女、マッケンジー。ニコ生でちやほやされてるJKって感じだ。ヤンキーと付き合ったり別れたりを繰り返している。ヤンキーを振り回しているため、仲間の女からの評判はよくない。
こいつはニコ生で録画放送していて、事件の当日の犯行推定時刻にヤンキーが映るっていう決定的アリバイがあるのに提出しなかった。何故か? もちろん秘密があったからだ。"誰もが秘密を抱えてる"。
彼女はネットの向こう側の男と浮気していた。その最中にヤンキーが現れたがごり押しで隠せた。だからヤンキーに浮気がばれたくないマッケンジーはアリバイを提出しなかった。
ヤンキーの人生をめちゃくちゃにしても、守りたい秘密があったのだ。女に嫌われる女は彼女にするべきではない。……って簡単に済ませたらいいのだが、このドラマはそんな単純な結論になるようにしていない。彼女も色々複雑な事情を持つ、”世界にゆがめられたティーン”なのだ。第7話でメガネに問い詰められた時のマッケンジーの迫真の表情は、必見である。正直俺は泣いた。心を揺さぶられたのだ。

そして最後の紹介になるがクリスタというキャラがいる。演じてる女優は日本語のWikipediaまであるので一部では有名なのだろう。俺は知らないが。
こいつはやべぇ。一見普通だがネジがずれてる。アレックスみたいなのとはレベルの違う、ウルトラハイスペック優等生だ。学級委員長で、10個くらいクラブ活動してる。サッカーでは代表選手。
でもやべぇ。なにがやべぇって、マジでやべぇことだ。可愛いからって何をしても許されると思ってるタイプの女の子だ。常に何かに抗議してる。何かに抗議するために階段に洗剤かなんかを撒いて、自分で滑って骨折する。はっきり言ってキチガイだ。
物語の最期の最期で、メガネとサムによって、あやふやに終わりそうだった事件の、真犯人ではないかと推理される。彼女はとある技術を有しているとされていて、それが確たるアリバイだったのだが、先のパーティでその技術がない事が露呈されたためだ。真実は思わぬところから現れる。見逃してしまったら闇のままだった。だが、サムは見逃さなかった。メガネは最後にクリスタに追及する。そしてクリスタは、回答を避けて、逃げた。俺はドキドキしながら、全8話の旅を終える。俺は震えはじめ、結末を噛みしめる。


とてもメッセージ性の強い作りになっている。
だけど全然、押しつけがましさは感じなかった。メガネのピーターくんのリアルな心情の変化が描かれてきていて、自然だし、そもそも「チ○コ落書き事件」という元々の下らなさで中和されてるから。
現代日本にも通じる風刺が多くて、本当にリアルに感じられる。
日本にもディランはいるし、シャピロはいるし、アレックスもサラもいる。クリスタは流石にいねえかな。いたらやべえわ…んーでも、今ならいるのかな?
誰もが秘密を抱え、嘘をつき、誇張するし、偏見を持つ。世界が「虚構」の上に成り立っているという現実を、まざまざと見せつけられているのだ。何度も言うが、リアルなのだ。

無駄なシーンは一切ない。どうでもよさそうな描写が大切だったり痛烈だったりする。
どんどん事態がやばくなっていくから続きが気になる。
「hey」を「heyyy」にするとR-18な意味になるとか、どうでもいい雑学も身につく。
(それにしても思ったのがアメリカの高校ってすげえよな。プロムとかどんだけだよ。モーニングショー9とかもしっかりしてるし)

だから面白い。


シーズン2にもピーターとサムが出演するようだ。
ザ・タード・バーグラーなる人物を見つけろと依頼されたらしい。トレーラー見たが汚すぎてやばいと思った。大丈夫かコレ。
どうでもいいが邦題どうなるんだよ。○○高校う○こ事件簿とか? やべえだろ。これだからダセェ邦題なんかつけるなって言ってる。アメリカを荒らすヤツらとかで良かったと思うぞ。
とにかく来週がめっちゃ楽しみだ。待ちきれない。